忍者のブログ

海外旅行をした時に、これは何故?どうしてこうなの?と思うことがいろいろ有りました。面白い話や常識では解らない話など物語風に少しづつ書いて行きたいと思います。

■ 幻だったの怪? ■

   ■ 幻だったの怪? ■

 

 バースに滞在中にB&Bのスタッフのお嬢さんにバースで一番のスポットを教えてもらいました。宿泊しているB&Bの近くを流れる川のほとりを少しさかのぼり、白い橋を渡って舗装道路をひとつ渡って、鬱蒼とした木のトンネルを通り過ぎると、広々とした芝生一面の丘陵が目の前に開けてきました。その丘陵は何処までも続いています。牧場になっているのか、遠くに馬が2、3頭、食事の真っ最中。私はその芝生の坂を1人でどんどん登っていきます。ここを登る時は途中で振り返ってはいけないと言われていたので、丘の頂上を目指してまっしぐらに登っていきました。やっとのことで頂上付近に到着。そこで初めて後ろを振り返ってみてビックリこ!

   こりゃ、絶景かな、絶景かな!

そこはバースの街が全て見張らせる素晴らしい場所だったのです。盆地状の土地に広がる箱庭を思わせるような美しい街が眼前に広がっていました。180度に広がる一大パノラマの景色にしばし呆然。こんなに素晴らしい景色に出会ったとは大感激!

その場を離れるのが惜しくて、そこに佇むこと小1時間。美味しい空気を目いっぱい吸い込みながら周囲の景色を堪能していました。

翌日も夕食の後、あたりが暗くなり始めた9時過ぎに部屋を出て、明かりの無い夜道を丘の頂を目指して登り始めました。9月も末の雲一つない爽やかな夜です。途中、ランニングをしている五、六人の男女とすれ違いました。そのまま通り過ぎると思っていたら、1人1人がみんな「ハロー」ってな声を掛けてきました。

   こちらも負けずに「ハロ、ハロー」

    イギリスの若い人は気持ちがいいねぇ。

    空気はいいし、爽やかだし、若者も清々しいし、

まるで天国に昇った感じ。

だけど、自分は1人っていうのも寂しいね。

   天国に行くときは誰も連れが居ないのがあたりまえ。

     誰か1人でも一緒に連れて行けば?

   それでは、今から君を指名しておこう。宜しくな!

その夜景の美しさといったら何とも言えないくらい。遠くに見える真っ暗闇の中にオレンジ色の街灯の列が碁盤の目のように浮かび上がる風景は、まさに幻想の世界なのです。

 更にその翌日。3度目は小雨の夜。雨二モ負ケズ傘をさして丘の上へ。雨に煙るバースの街も、何とも落ち着いた雰囲気で、また一味違った趣に包まれていました。

   こんな素晴らしい景色を1人で見るのはもったいない。

    よし、次回はきっと誰かを連れて来よう。

この丘は、どの案内書にも載っておらず、普通の観光客には絶対に来る事の出来ない場所。地元に住む人しか知らない場所なのだそうです。

こんなに素晴らしい場所を教えてくれた

B&Bのスタッフのお嬢さんに感謝、感激、雨、みぞれ!

     はぁ????

その時以来この景色をもう1度見たいと思っていた私は、4年後に再びバースを訪れました。

今度は家内と、息子と、その友人を連れて。

     なんだ、僕を連れて行くんじゃなかったの?

      天国に行ってみたかったのに。

   昇天するにはまだ早いでしょ。

     まあいいや。

「幻想的な夜景を見せるから」と言って、夕食を終えた9時過ぎに、霧雨むせぶ真っ暗な坂道を、傘を手に手に丘の頂を目指して登り始めました。途中、後ろを振り向かないようにと言いながら、あの素晴らしくも幻想的な夜景を心に描きつつ、それを3人にも見せてやりたい一心で。

「どこまで登るの?」とブツブツ言い出す3人をなだめすかして、やっと到達した頂上で、「さあ、ここで一斉に後ろを振り返って」と言いながら自分も後ろを振り返ったとたんにまたビックリこ。

   エッ? ウッ? オッ?

 見えたのは、心に刻んでいたあの幻想的な夜景ではなく、どこでも見られるごく普通のありふれた夜景!

「なにこれ?」「どこが幻想的なの?」「ウッヒャッヒャッ!」

うしろからいきなり冷やかな声が3つ。私の背中に突き刺さったのです。

最後の笑いは何なんだ。

そして私自身の口からもう1度出た言葉。

   なにこれ?ウソだろ?どうしちゃったの?

唖然とした私は、ここは何処?私は誰?状態に陥る!

   幻想的な夜景を見せると言って・・・・

雨の夜に3人も連れて、・・・・・・・・

    30分も歩いて来たのに・・・・・・・・

    まるでペテンにかけられたようだ。

     ほかの3人のほうがペテンにかけられたと思たんじゃない?

そこで逆にペテン師の烙印を押されちゃった訳ね?

   まぁ、それに近いかもね。

真っ暗闇の中にオレンジ色の街灯の列だけが、道路に沿って碁盤の目のようにひっそりと浮かび上がっていた、あの幻想的な雰囲気を醸し出していた4年前の夜景は何処へ行ったのでしょうか。3回も見に行って、心に焼き付いていた景色なのに!

    可哀そうなのはこの子でござい、だね。

     それでペテン師を返上出来たの?

   いや出来ていない。もう1回連れて行かなけりゃ無理だね。

    幻想的な夜景は絶対ある筈なんだから。

ホテルの部屋に戻って1人で自主反省会。

     何だい、そりゃ!

つらつら考えるに、

前回見たのは9月の末、

今回は8月の真っただ中。

時期的にも1カ月以上の差が有ったんだ。

  それが何だっていうの。

 あの幻想的な夜景は、夏が過ぎて街が落ち着きを取り戻した9月下旬以降の9時過ぎでないと見られないのだろうという結論に達しました。8月さ中の書き入れ時に、街中の店は賑やかに明りを付けて夏の宴の真っ最中だったのです。まさに煌々とした街の明かりが、かつて見た幻想の夜景を見事にかき消していまっていたのです。

   絶景を見るのは時期と時間が大切だということが良く解ったよ。

     いつでも同じ景色が見られる訳じゃないんだ。

      せっかく良い景色を見せてやろうと思ったのに、

      結局、その幻想の世界は3人に伝わらなかったんだね。

      お互いにかわいそうなことをしたもんだ。

      おまけにペテン師のままで。

   それにしても息子が発した最後の「ウッヒャッヒャッ!」が

いつまでも耳を離れなかった・・・・

 ♀ああ、可哀そう。

幻想的どころか、幻の夜景になっちゃったんだ。

      もう1回行くしかないね。

   次は君をあの幻想的な天国に連れて行ってあげよう。

     まだもう少し生きていたいからノーサンキュー!