忍者のブログ

海外旅行をした時に、これは何故?どうしてこうなの?と思うことがいろいろ有りました。面白い話や常識では解らない話など物語風に少しづつ書いて行きたいと思います。

■ 教えてくれないの怪? ■

  • 教えてくれないの怪? ■

 

 

 欧米の列車は、発車時刻が来ると黙ってスルスルとホームを出て行ってしまいます。列車が駅に入線してくる時も静かなものです。ホーム自体がとても静かなのです。

 日本の駅のように、「まもなく1番線に上野行きの電車が来ます。危ないですから黄色い線の内側にお下がりください。」「ドアが閉まります。ご注意ください。発車間際のご乗車は危険ですからお止めください。」なんて放送は一切無く、まして「ピーッ!」なんて笛も全く無いのです。

   A最近は何故かJRの笛も少なくなったね。

     B:一昔前は、ドアを閉めるぞ、早く乗れ「ピーッ!」って感じだったけどね。

       民間会社になったので上から目線の「ピーッ!」はやめたのかな?

 イギリスの列車は黙って静かにホームに入って来て、黙って静かに発車して行くのです。それはそれは、駅の中全体がとても品のいい雰囲気に包まれているのです。

 

 エジンバラから、南部の都市バースに7時間の鉄道旅行を楽しむべく、朝10時5分発の列車を目指して出掛けて行きました。市の中央部にあるウエイバリー駅のプラットホームに発車10分前に着きました。

 列車の出る13番ホームに行くと、そこには既に列車が止まっていましたが、まだ客は皆ホームで待っていて誰も列車に乗り込んでいません。ホームに設置されているモニター画面で確認すると、時間もホームも間違い無く合っていて、まさに私が乗る列車が目の前に止まっているのです。でも、まだ清掃中かな? 行き先は~と列車の乗降口の周りを見回したのですが、どこにも見当たりません。

 窓の外から列車の中を覗いて見てびっくり! お召し列車のように超豪華! シートが全部ラウンジ風でゆったりこ。映画にでも出て来るように豪華で華麗!7時間の列車の旅なので奮発して1等車の切符を買ってはいるんだけど、何でこんなに豪華な列車なの?

   A:いいねぇ、イギリスの1等車ってこんなに豪華なんだ。

     これなら7時間乗っても飽きないね。

でも発車5分前になってもホームで待っている人は誰も乗り込まない。心配になって、プラットホームにいた男の駅員に列車を指差しながら切符を見せて、この列車の1等車はどの辺かと聞いたところ、列車の方を指差して、乗れば車中で案内しますとのこと。

      B:そうなの? 

 そうこうするうちに発車1分前。でもまだ誰も乗り込まない。心配になって、もう一度近くを通った別の女性駅員に切符を見せながら同じ事を聞くと、乗れば車中で案内します、とこれまた同じ答え。誰も乗り込まないし、普通の1等車にしては豪華すぎる。乗るか乗るまいか迷っているうちに、列車は誰も乗せずにスルスルと静かに発車してしまった。あれよ、あれよ と言ったところでもう遅い!

 見送った列車の最後尾の展望車に白いシャツを着て荷物を持った若い男女が5~6人乗っているのが見えた。

   A何だこりゃ? 客が乗ってるじゃない!

     B:乗るべきだったの?

 それから30秒も経たないうちに、同じホームに別の列車が入って来た。今度は行き先が書いてある。おぉ、これこそ我が乗るべき列車だ! さっきの列車は何だったんだ。乗らないで、良かった良かった。もし乗ってしまったら何処に連れて行かれるか判ったもんではない。それにしても駅員の随分と不親切なこと。

     B差し出した切符をろくに見もしないで!

        揃いも揃って二人共ってかい? 

  ところが後で分かって驚いた。あの豪華な列車は、エジンバラを起点として運行されている『ロイヤル・スコッツマン』という「超豪華列車の旅」用の車両だったのです。

   Aそういえば列車の外側に、確か『ロイヤル・アンパンマン(?)』

      とかなんとかって大きく書いてあったような気もするなぁ・・・・

 9両編成なのに客の定員は僅かに36名。寝台個室、レストラン、ラウンジ、展望車など至れり尽せりの列車で、車内泊4泊5日食事付きの旅でツインルームがお1人様60万円を超えるそうな。

     B:何だいそりゃ!贅沢な列車だね

   A:少なくとも庶民の乗り物じゃない事は確かだ。

      旅行中の外国人が乗り込まなくてホントに良かった。

     Bでも、その時に乗り込んでいたらどうなるか

       オモシロかったろうなぁ。

      何で乗ってるんだって怒鳴られたりして・・・・

    A:怒鳴られたら、ソントキノイノキだって怒るよ。

     『日本にゃこんな紛らわしい止まり方をする列車は無いっ!ダーッ!』

     B:アントキノイノキでしょ。

   A:この時はソントキなの!

 

 でも、家を出るのが遅れて発車時刻間際に駅に飛び込んだ日本人なら、目指すホームと時間に列車が待っていれば、まずその列車に飛び乗ってしまいますね。地元の人は皆『ロイヤル・スコッツマン』を知っていたので誰も乗らなかったのでしょう。

   A慣れない日本人が乗ろうとする列車の同じ時間、同じホームに、

      ダイヤに載っていない関係の無い列車を止めておかないでよ!  

 更に後で分かった事。『ロイヤル・スコッツマン』は通常20番ホームから発車し、発車時刻は午後1時30分、出発に当たっては乗車口で歓迎のバグパイプの演奏付き。旅行中、列車内での夕食時刻から翌朝8時迄の間は列車は走らず、豪華レストラン、豪華ホテルの役目を果たすとの事。振動でワインや食事がこぼれないよう、寝る時も振動が無く安眠出来るようにと、止まっている事に価値を見出しているのです。見た目の通りそれはそれは贅沢な列車だったのです。

     B:それじゃぁ、朝、13番ホームに止まっていた

       あの『ロイヤル・アンパンマン(?)』はいったい何だったの? 

       最後尾の展望車に乗っていたその白いシャツ姿で荷物を持った若い男女は何だったの? 

 

 今考えるに、『ロイヤル・スコッツマン』は午後の発車に備えて13番ホームに取り敢えず入線したあと、時間調整のために暫く止まっていたのです。そして定刻に発車する列車が後から来たので、知らん顔をしてそ~っとホームを出て行った。

 最後尾に乗っていた若い男女は客ではなく、制服を脱いで白いシャツ姿になっていた乗務員で、持っていた荷物は旅行用のバッグではなく、乗務員用のバッグだったのです。

 そうとしか考えられないのです! その間、ホームでのアナウンスは何も有りません。何も言わな過ぎというのも、慣れない旅行者にとっては過酷な事です。とは言っても案内の放送が流されたところで、どうせ早口で言うのでしょうから英語の苦手な私にとっては放送が無いのと同じなのですが。

 でも、いいかげんな返事をした二人の駅員だけが未だに理解出来ません。妙な東洋人が聞いたのでからかったのかな?

 あとで聞いたところによると、『ロイヤル・スコッツマン』は特別な列車なので、それを運行させている会社は普通の列車の会社とは別会社が経営しているとの事が分かりました。そのために、ほかの会社の一般の駅員はこの列車の様子が分からず、聞かれた時には車内で案内しますと答える事になっていたのかもしれません。プラットホームにいた男と女の駅員が同じ答えをしたところからすると、そんなところかも知れません。

 イギリスの鉄道は、同じ線路の上を幾つもの会社の列車が走っており、プラットホームもどこどこの会社用とは区別されていず、複数の鉄道会社が共用しているのです。

     B:車両と乗務員は持ち込みで線路とホームの施設は共用ってこと?

       それじゃ、駅員も別の会社の列車の事は良く判らない筈だね。

   A憎っくきは『ロイヤル・アンパンマン(?)』と二人の駅員!

     Bそりゃ、豪華列車に乗れなかった腹いせというものだね。

 幸いにも私が間違わないで無事に乗れた列車は、荷物を所定の位置に収めて座席に着くと間も無く、発車の予告も無しに静かに動き始めていました。

   A発車の実感がまるで無いんだよ。

     B:イギリスの列車は全く品がいいんだねぇ。

   A:でも品が良すぎて私にゃ解りにくかったね。